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東京高等裁判所 昭和25年(う)3288号 判決

被告人

飯島重雄

主文

原判決を破棄する。

本件を東京地方裁判所に差し戻す。

理由

職権をもつて原審の記録を調査するに、弁護士折田清一は被告人の妻飯島ハナから弁護人に選任された旨の書面を同女と連署して原審に差し出した上、第三回公判期日に出頭しなかつた以外は、各公判期日に出頭し、被告人の為に訴訟行為をなし、これに対し被告人は何等異議を述べてないことを窺うことができるけれども、当審が取り調べた証人大島君子の供述によれば、被告人の妻は飯島ハナといわず、内縁関係を結ぶに過ぎない大島君子といい、且つ同人及び被告人が所持する飯島なる印章は、前記弁護人選任届書の飯島ハナ名下に押捺の印章と全然異ることを窺うことができ、しかも当審が取り調べた証人折田清一の供述によれば、同人は原判決後初めて右の大島君子に会見したに過ぎないことを看取することができるので、当審に至りて未だに弁護士折田清一に対する被告人の授権を証する書面の提出なき本件にありては、原審における訴訟行為は弁護人なくしてなされたものといわなければならない。しかるにおいては強制弁護事件である本件にありては、既に刑事訴訟法第二百八十九条の規定に違背して訴訟手続がなされたものというべく、この違法は原判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免がれない。

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